アイヌ語地名解析システム構築のための基礎的考察

 [概要]
 アイヌ語地名解析の自動化のための辞書の構成について検討を進め,アイヌ語地名解析辞書とアイヌ 語地名構成要素辞書の基本的な構成と内容について考察した.羽田野[羽田野正隆:アイヌ語地名の史料における出現頻度,北方文化研究,No.20,pp.17-32,1989.]によってまとめられ,切替[切替英雄: 頻出アイヌ語地名の形態論的構造,アイヌ語地名研究,No.3,pp.105-142,2000.]によって形態論的 な考察が加えられている異なり語数231語の「頻出アイヌ語地名」の構成と構成要素に関する基礎的な検 討を進めて,切替による構成の分類を少し拡張する方向で,アイヌ語地名の基本的な構成パターンにつ いての一般的な考察を行った.「頻出アイヌ語地名」に含まれる地名についてアイヌ語地名解析辞書とア イヌ語地名構成要素辞書の基本構成の電子化を進め,その辞書を利用してアイヌ語地名の構成を解析す るシステムの試作を行い,問題点について検討を進めている.

[例:アイヌ語地名解析辞書の基本構成と例]
 アイヌ語地名:範疇構成:日本語直訳:範疇構成:日本語訳:解釈情報(由来・出典・現地)】 [yam-wakka-nai:自動詞+名詞+名詞:冷たい・水・川:形容詞+名詞+名詞:冷たい水の川:「この付近は水 のよくなかった所だそうで,そこによい水の川があったので付けられた名であろう.旧図をみると フシコ・ヤムワッカナイの所に小川が書かれており,これが元来のヤムワッカナイだったのであろう. だいたい港1丁目の辺だったらしい.・(山田秀三)・稚内]
[山田秀三:「アイヌ語地名の研究(全4巻)」,草風館,2000(復刻版;初版1982).]

[例:アイヌ語地名構成要素辞書の基本構成と例]
【アイヌ語地名構成要素:範疇:日本語訳:範疇:補足情報(方言・出典・ ) 】
[yam:自動詞:冷たい:形容詞:H北;K(知里真志保)]
  [知里真志保:「地名アイヌ語小辞典」,北海道出版企画センター,2000(復刻六刷;初版1956).]

[アイヌ語地名の構成:切替英雄「頻出アイヌ語地名の形態論的構造,アイヌ語地名研究」(前出)]
(1)名詞 (2)名詞+名詞
(3)名詞+位置名詞 (4)連体詞+名詞
(5)修飾構造をなす地名 (6)疑似修飾構造をなす地名
(7)主要部のない地名 (8)構造のわからない地名
この切替による構成を基本として,若干の拡張について考察を行っている.

[アイヌ語地名解析システムの試作]

・辞書ファイルを指定して,地名を入力し,解析ボタンを押すと,結果が示される.
・現在のシステムは,構成要素解析を形態素解析の一つの手法である最長一致法で行っているので,例えば,次のような誤解析を行う.
  toput=>top‐ut:名詞・名詞:竹・肋骨
 正しくは次のように解析されなければならない.
  toput=>to‐put:名詞・名詞:沼・口
 地名を構成する二つの構成要素の間の意味的な連接関係についての知識が必要となる.

・システムはJavaで作成されている.


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