研究テーマ:「光と画像」
光技術と画像工学の統合による高機能計測・情報処理技術の開発


主な研究テーマ

主な研究成果例
(A) フラクタル的光散乱場の生成

光散乱現象を生じる光学系を工夫することにより,空間的強度分布が自己相似性やべき関数的相関などのフラクタル的特徴を示す光散乱場を生成することが可能である.そのような散乱場の生成方法を理論的に提案し,それを生成する実験を行うとともに,計算機シミュレーションの手法を用いて詳細な検討を行い,散乱場にフラクタル性が現れるための照射光学系の条件や,生成したフラクタル的散乱場のマルチフラクタル構造などについての新たな知見を得た.

フラクタル的光散乱場の強度分布の例
(実験結果)
フラクタル的光散乱場の強度ゆらぎの相関関数
(計算機シミュレーション)

(B) 非回折性光散乱場の生成と応用

自由空間中を伝搬しても形や大きさが変わらない光ビームは非回折性ビームと呼ばれ,その代表的なものとしてベッセルビームが知られている.そのような特性を光散乱場にも付与できることを示し,生成した非回折性散乱場(左の図)の応用として,光軸方向の移動に高い不感性を有する物体の移動計測法を開発した.右の図は,測定対象物体が光軸に垂直な面内だけを移動した場合と,面内に加えて光軸方向にも面内移動の100倍の距離移動した場合の移動量計測曲線である.二つの曲線はほぼ一致しており,光軸方向の移動にはほとんど反応していないことがわかる.

非回折性光散乱場の強度分布
  (実験結果)

非回折性光散乱場を用いた散乱物体の移動量測定.横移動だけの場合(実線)と横移動にその100倍の縦移動を伴う場合(破線)の測定結果



(C) 画像処理による冬季舗装路面の状態判別

冬季の舗装路面は,積雪の状態や路面の種類によって様々な変化を示す.CCDカメラにより取得した画像からその路面状態を自動判別することを目的として,路面画像に対する種々の統計的解析を行った.その結果の一例を下図に示す.路面画像の輝度確率密度から得られる歪度とコントラスト,および路面画像のフラクタル次元を用いて,2種類の舗装に対する計6種類の状態を概ね判別できることがわかる.(工学部土木工学科武市研究室との共同研究)

異なる状態の舗装路面の例.乾燥状態(左)と雪氷充鎮状態(右)の排水性舗装路面

画像の輝度の歪度,コントラスト,およびフラクタル次元を用いた舗装路面の状態判別
(交差法によるステレオグラム表示)
 
(D) 一般化微分法による近赤外分光スペクトル解析

 近赤外分光法におけるスペクトル解析では,スペクトルに対する前処理として1次または2次の微分処理を行うことが多い.この微分演算を整数から実数に拡張した一般化微分法,および,さらに微分によるピークの移動を抑制した一般化絶対微分法のスペクトルへの応用を行っている.下図は,米の近赤外スペクトルとその一般化絶対微分スペクトルの例,および一般化微分処理を施した米の スペクトルとその主要成分であるアミロース,水分,および蛋白質との相関スペクトルの例である.最後の例では,微分次数の連続的増加とともに相関ピーク(濃赤色部分)が狭くなる,ピークが分離する,新しいピークが出現するなどの変化が現れていることがわかる.

米の近赤外吸光度スペクトル(左)とその一般化絶対微分スペクトル(右)
一般化微分処理された米の近赤外スペクトルとその成分
(アミロース,水分,蛋白質)との相関スペクトル
 
(E) 画像処理による古い円盤レコードからの非接触音声再生

 円盤レコードの表面をCCDカメラで撮像し,適切な画像処理を施すことにより,その音溝のパターンを音声信号に変換することができる.そのための画像処理の最適化と高速化を進めている.

円盤レコードの音溝の写真(左)とそれから抽出した音声信号の例(右)

最終更新日:2004年1月5日
北海学園大学工学部
電子情報工学科 魚住研究室
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uozumi@eli.hokkai-s-u.ac.jp